こんにちは。
“うっちゃん”(ポップな鬱を抱える人)27年目、戸田幸紀です。
鬱というほどには重くない。でも心はとっくに限界を迎えている。シリアスではなく、ポップな鬱人のこと、そんな人を僕は“うっちゃん”と呼んでいます。
先日、小川 糸さんの最新小説、「小鳥とリムジン」を読みました。
「食堂かたつむり」、「ライオンのおやつ」と、小説の中でも、彼女の“生”をテーマにした作品が特に好きな僕は、“愛”と“生”を題材にした今作も非常に楽しみにしておりました。
読んだ感想としてはやはり傑作であり、小川 糸さん特有の穏やかな情景に心が洗われ、次の日から豊な心持ちで過ごすことが出来ております。
“うっちゃん”の心も綺麗に洗い流してしまう、
小川 糸さんは天才であり、日本人の誇りだと感じました。。
ですが一点、当作の主人公である小鳥ちゃんの描写にて、どうしても引っかかる内容がありました、、
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「本当に好きな人との口付けは、“甘い果実を吸った様な優しい味がする”」
そんな様な事が書いてあった。
僕は彼女の美しい表現に心を浸しながら夢見心地だった一方、同時にあることを強烈に思った。
「ちょっと待てよ、、その味僕は知らないぞ。。!!!」
僕は小川さんの言ってることは全て正しいと思っている。
あんな素敵な作品を書ける人の言っている事が、間違っているなどあり得ない。
本当に好きな人とのキスは、“甘い果実の味”がするんだ、、!
僕だって今年で27歳になり、それなりの経験をしてきた。
キスだって色々な味を知っている。
気遣いのできる彼女とした、ほのかに香るミンティアの味。
安いアルコールの香りだけが残る、名前も思い出せないあの娘との味。
罪悪感が残る、二日酔い特有の不快な味。
貴方はどうだろうか、、?
“甘い果実の優しい味”を味わったことがあるだろうか、、?
もしその答えが「No」なのであれば、
それは“本当に好きな人とはキスした事が無い”という動かぬ証拠ではないだろうか。
加えて、もし今のパートナーとのキスに、“甘い果実の優しい味”がしないのであれば、そこに“愛”などは存在しないのではないだろうか。
僕は少し焦って同僚や友人に聞いてみた。
「“甘い果実の優しい味”がするキス、したことある、、?」と。
全員が「そんなこと一度もない」と回答した。
全員が質問の意味を聞いてきたけど、それとなく誤魔化してその場を去った。
僕は小さくガッツポーズをした。
「結局全員、妥協の中で折り合いをつけ、パートナーを選んでいるんだ、、!!」
世の中が少しだけ寄り添ってくれた気がした。
戸田 幸紀